TALE TELLER
1st Full Album
2018.04.25 RELEASE
01. 「SALT」
02. ジオラマ東京
03. bible
04. mothership
05. the lost future
06. 魔法
07. 百代の過客
08. last call
09. dreambreaker
10. 雨
11. 熱水チムニー
■作品概要
シンガーソングライターsone(ex.ATLANTIS AIRPORT)と、ベーシスト小林樹音(THE DHOLE/ex.TAMTAM)のトラックメイカー名義=JitteryJackal(ジッテリージャッカル)によるコラボユニット=sone+JitteryJackal。2016年に結成され、同年11月にライブ会場限定ミニAL『SCENES』を、2017年6月には、コラボミニAL『LIFE CIRCLE』(good night! Records)を立て続けにリリース。そして2018年、全国流通としては初となるフルアルバム『TALE TELLER』を完成させた。
本作は新曲+処女作『SCENES』からのセルフリメイク3曲を含む全11曲を収録。テクノ~ダブをバックボーンとするJitteryJackalによる、ダブ・ステップ~EDMなどを取り入れた現代的、先鋭的なサウンド・プロダクション。soneの奔放かつ華やかで、ソウルフルな味わいも感じられるボーカル。このふたつが有機的に混じり合うことで、都会的なスマートさを持ちつつ、フリーキーで躍動感に溢れるポップスとして成立しているのが特徴だ。歌詞においては、タイトルにも冠された“物語を語る者”というコンセプトを体現するかのごとく、社会や街を俯瞰した視点を含めて綴られる、SF的な情景も魅力のひとつとなっている。
エモーショナルなトラックの上で箱庭的世界を歌う「ジオラマ東京」、歌詞・サウンド共にループを駆使することで宇宙を描き出す「mothership」、soneのボーカル力が活きるドラマティックなバラード「熱水チムニー」など、ユニットとしての方針がしっかりと窺える楽曲が揃った。
基本的には「歌もの」であり、J-POPとしての親しみやすさもありながら、メロディの構成や音色にはオルタナティブな要素を随所に感じられるのは大きなポイント。また、ミキシング及びマスタリングを務めたのは、ポストロックバンド・ハイスイノナサのベーシストで、sora tob sakanaのミキシング及びマスタリングも手掛ける照井淳政。ボーカルが前面に出過ぎることなく、細かな音にも配慮された設計となっている。
sone、JitteryJackalともに、バンド活動を経て辿り着いたこのユニットは、セッションや打ち合わせなどを極力なくし、ほぼデータのやり取りで楽曲を完結させる手法を取っている。だが、そのフラットな関係から生まれる、率直かつシンプルな音楽的思索の結合が互いの本質的な音楽性を引き出し、翻ってエモーショナルな響きを獲得しているのは間違いないだろう。このユニットの在り方を維持するのか、臨機応変に革新していくのか。時代に適合した、“ジャストなポップス”を目指すふたりの起点となる作品である。
森樹(編集者/ライター)